2011年5月7日土曜日

「フォグバー」開発秘話 ワックス全盛時代に社長直?

 男性用ヘアケア市場で、ワックス全盛時代に登場した資生堂の霧タイプの「ウーノ フォグバー」は、瞬く間に若者を中心に支持を集め、大ヒットした。その開発は、担当者による社長への直訴から始まった。

 ■懇親会で社長発見!

 その日、ヘア製品開発グループの藤山泰三さんは、グループのメンバーとともに、横浜市都筑区にある資生堂リサーチセンターで、社内研究発表会後の懇親会に参加していた。そこで前田新造社長をみつけると、意を決して歩み寄りを決してこう切り出した。 「『ポストワックス』を作らせてください」

 資生堂は平成8年に発売したヘアワックスで、無造作な髪形を作り込むヘアスタイルの流行に乗る。ワックスは男性用整髪剤の主役の座をつかみ、整髪剤事業の稼ぎ頭となっていた。

 だが、発売から10年がたち、市場調査のデータはワックス使用量の減少と商品購入頻度の落ち込みを示していた。藤山さんは消費者のワックス離れが始まったことを感じていた。

 ライバル会社、マンダムのワックス「ギャツビー」が人気グループ、SMAPの木村拓哉さんを起用したCMで攻勢をかけ、シェアで資生堂を引き離し始めていた。

 ■渋谷?原宿で観察

 「ウーノ フォグバー」の開発はまず、ワックスに代わる商品のコンセプト探しから始まった。企画?マーケティングを担当する内山正信さんは、ヘアスタイルの流行を探るため、渋谷や原宿などに何度も足を運んだ。

 そして街を歩く人たちの髪形にある変化が起きていることに気付く。髪を固めすぎず、自然に見せるヘアスタイルが増えていた。ワックスをたっぷり使うスタイルではなく、せいぜい「薄付け」になっていた。

 ワックスはしっかりとスタイルを付けることを重視した商品であるため、薄く付けてもおそらくはユーザーが求めるより髪が固まりすぎているはずだし、べったりしているはずだ。「固めず、まとめる」。そんな整髪剤があれば若者にきっと受ける。これが開発の方向性となった。

 それでも、コンセプトを実現するには、既存の整髪成分の改良では対応できない。固定力が強いためだ。

 開発グループは早速、新しい整髪成分の原料選びに乗り出した。素材探しが難航する中、突破口となったのは、悩む藤山さんがふと目をとめた卓上の付(ふ)箋(せん)紙だ。

 「灯台下暗しだった。張ったりはがしたりでき、強すぎない一定の粘着力がある」(藤山さん)。

 藤山さんらは、これをもとに原料メーカーと共同研究を重ね「フィットポリマー」と呼ばれるアクリル系の樹脂にたどり着いた。これを使えば、髪の毛1本1本を柔らかく粘着力のある皮膜で覆い、べたつきがない。髪を自然にまとめられ、付箋紙が繰り返し使えるように、スタイリングのやり直しもできた。

 ■最適配分で試行覚悟

 開発グループは、スタイリングの際に自然な風合いを出すため、整髪成分を霧状の液体にして髪にまんべんなくなじませる方式を採用することを決めていた。ところが、フィットポリマーを、この使用法に最適な成分に仕上げる製剤作業がなかなかうまくいかない。

 フィットポリマーをどう水に溶かすか、どこまで整髪力を持たせるか。最適な成分バランスを見つけ出すまで繰り返された処方は3千通りにものぼった。

 試作品が完成したのは平成21年春。しかし消費者によるモニター試験の結果は「べたつく」など予想を超える酷評が並んだ。原因を調べると、モニターのほとんどが、整髪成分を吹き付けすぎていた。

 2回目の試験では、少量を吹き付けて髪にもみ込むことをじっくりと説明した。そうすると評価は跳ね上がった。内山さんは「これで自信が持てた」と話す。

 そして21年8月、フォグバーは世に出た。ふたを開けてみれば爆発的な大ヒットで、品切れ店も出るほどだった。女性の購入者も多い。

 今年8月には整髪力を高めた新タイプも発売し、好評を得ている。内山さんやグループのメンバーはまだ満足していない。「10年、15年と愛されるようにしないといけない」と、市場を代表するロングセラー商品に育てることを狙っている。(中村智隆)

 【資生堂の「ウーノ フォグバー」】昨年8月に男性化粧品ブランド「ウーノ」から発売された整髪剤。英語で「霧」を意味するFOG(フォグ)の商品名の通り、液体の整髪成分を霧状にして髪に吹き付けて使う。新開発の水溶性整髪成分で、髪をまとめる「スタイリング機能」と、べたつき感がなく、何度でも簡単に再整髪できる「自然な風合い」を両立させた。発売直後から話題を集め、1カ月で初年度目標の240万本を売り上げた。購入者の2?3割を女性が占め、男女の別なく使える整髪剤という新市場を形成しつつある。市場想定価格は892円(100ミリリットル入り)。

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引用元:RMT

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